.・oO 2.めえめえ、翻車魚を拾う
いったい、めえめえが、どうして翻車魚を拾ったのかをお話しましょうね。
大体めえめえは、こんなに大きなお魚を拾うつもりはありませんでした。何しろ非力で根性なしのめえめえのことです。
ところが、或る日のこと、散歩がてら、めえめえが珍しく小さなお舟で海に出ると、まるで飛魚か何かのように、俄かに例の巨大な翻車魚がめえめえの舟の上に飛び込んできたのです。
めえめえは驚きました。けれども、どうにも出来ません。ただ、おろおろと、両前脚の蹄を口許へ持ってきて、めえめえめえめえ呟いているだけです。そうしている間に、翻車魚の重さで、めえめえの小舟は沈んでしまいました。
「めへぇーん、」
めえめえの悲鳴が辺りに響き渡りました。でも、どんなに大きな咾で啼いみても、此処は広い海の上。仔山羊一匹の啼き咾なんか誰にも聴こえやしません。が……あ、何か忘れてはいませんか。そうです。飛び込んできた翻車魚です。翻車魚はお魚ですもの、水の中ならすーいすい。
そう思いついて、ふと傍を見遣ると、思った通り、翻車魚が平らにぷっかりと浮かんでおりましたので、めえめえは必死でその上に登りました。めえめえが、けほっけほっと、むせているうちに、早くも向うに岸が見えてまいりました。早くも、と云ったって、そこはやはり魚類の中では特別に鈍い翻車魚ですから、あちこちの岩にぶつかりぶつかり、ですけれどもね。まあ、毛皮を着込んだめえめえが泳ぐよりは、ずっとましなのです。
そして翻車魚は砂浜にめえめえを、無事、送り届けてくれたのでした。しかし、物語は此処までではありません。その後、今度は翻車魚の方が海へ帰れなくなってしまったのです。めえめえがほっと一息ついて翻車魚を見ると、彼は頭を砂に突っ込んで、苦しそうに大きな鰭を上へ下へ、ぱたぱたしています。めえめえは慌てて翻車魚を引っ張り出しました。
ここまで来て初めて、二人はやっと安心したのです。そこで翻車魚が口を利きました。
「めえめえちゃん、助けてくださって本当にありがとう。ぼく、何かお礼がしたいなあ、」
「めめっ、めめっ、お座布が慾しいっ、」
「……どうして、」
「…お舟漕いだから……しっぽ、痛いの…」
と、こんな訳で、めえめえは森の中、立派な座布団を背負ってお家に帰ることになったのでした。
めでたしめでたし。
大体めえめえは、こんなに大きなお魚を拾うつもりはありませんでした。何しろ非力で根性なしのめえめえのことです。
ところが、或る日のこと、散歩がてら、めえめえが珍しく小さなお舟で海に出ると、まるで飛魚か何かのように、俄かに例の巨大な翻車魚がめえめえの舟の上に飛び込んできたのです。
めえめえは驚きました。けれども、どうにも出来ません。ただ、おろおろと、両前脚の蹄を口許へ持ってきて、めえめえめえめえ呟いているだけです。そうしている間に、翻車魚の重さで、めえめえの小舟は沈んでしまいました。
「めへぇーん、」
めえめえの悲鳴が辺りに響き渡りました。でも、どんなに大きな咾で啼いみても、此処は広い海の上。仔山羊一匹の啼き咾なんか誰にも聴こえやしません。が……あ、何か忘れてはいませんか。そうです。飛び込んできた翻車魚です。翻車魚はお魚ですもの、水の中ならすーいすい。
そう思いついて、ふと傍を見遣ると、思った通り、翻車魚が平らにぷっかりと浮かんでおりましたので、めえめえは必死でその上に登りました。めえめえが、けほっけほっと、むせているうちに、早くも向うに岸が見えてまいりました。早くも、と云ったって、そこはやはり魚類の中では特別に鈍い翻車魚ですから、あちこちの岩にぶつかりぶつかり、ですけれどもね。まあ、毛皮を着込んだめえめえが泳ぐよりは、ずっとましなのです。
そして翻車魚は砂浜にめえめえを、無事、送り届けてくれたのでした。しかし、物語は此処までではありません。その後、今度は翻車魚の方が海へ帰れなくなってしまったのです。めえめえがほっと一息ついて翻車魚を見ると、彼は頭を砂に突っ込んで、苦しそうに大きな鰭を上へ下へ、ぱたぱたしています。めえめえは慌てて翻車魚を引っ張り出しました。
ここまで来て初めて、二人はやっと安心したのです。そこで翻車魚が口を利きました。
「めえめえちゃん、助けてくださって本当にありがとう。ぼく、何かお礼がしたいなあ、」
「めめっ、めめっ、お座布が慾しいっ、」
「……どうして、」
「…お舟漕いだから……しっぽ、痛いの…」
と、こんな訳で、めえめえは森の中、立派な座布団を背負ってお家に帰ることになったのでした。
めでたしめでたし。