さまざまな親の手記から読み取れる父親の役割について、大江健三郎作品の解題から、一人の父親の障害受容過程、その後のあり方を例として検証してきた。文学作品上では「仮の受容」が達成された状態を一歩ずつ描くことで、少しずつ障害が受容され、さらに障害というものを積極的に意義あるものとして意味づけるに至っていた。家族がそのような認識に立つための父親の役割が、確かに果たされていることが、大江のさまざまな仕事からわかってきた。
これまで私は、障害のある子ども本人への支援と、子どもにつきそっておられる、一緒に出会うことの多い母親のことを中心に考えていたが、今後は父親の重要性にも目をむけて、両親の支援を視野に入れたかかわりあいを考えていきたいと思う。
← 前 → 次